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    石原慎太郎氏がまだ都知事だった頃

    平成27年6月5日 コラム
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    石原さんがまだ都知事だった頃、

    「俺はとことん嫌われ、憎まれるオヤジでありたい。これからもそういう気持ちでやっていくつもりだ」

    というようなことをいつだかのテレビ番組に出演していた際に語っていた。

    こういう感覚の人間、というよりも男性を最近ほぼ見かけないが、自分はそのことの真意を痛いほど理解できるつもりでいる。

    今の日本、どいつもこいつも、嫌われることが嫌だから、あたりさわりのないこと、相手が喜ぶことばかり言って、それでだらだらと時間を費やす。そんな「理解のある」優しすぎるオヤジが溢れているが、一向に尊敬される気配もないように思われるのだが。

    もちろん、本当の愛情に溢れた、強い愛情に支えられた優しさを貫ける人は本当に最高であるし、そうでなくても、優しい人柄が人を救うことはもちろん分かっているのだが。私自身もそういう「優しさ」に若い頃は憧れ、渇望していた。

    私見で申し訳ないが、私の父親は、そういう意味で本当に「むかつく」人間だった。あいつさえいなければ。そう思ったことは一度や二度ではない。執拗に自分が「むかつく」ことばかりを連発し、挙句言いたい放題反論した。

    しかし、そんな父親がいなくなり、自分のどうしようもなさや、未熟さを痛感する今日この頃。本気の愛情がなければ、あんなことは決して言えるもんじゃないことが分かった時。

    「有難いものだなあ」

    と魂の奥底から深い感情が湧き起こる。

    父親とて、自分の未熟さや人間としての不完全さを重々自覚していながら、あえて子供に激怒する。

    「俺が未熟だからこそ言ってるんだぞ!」

    自分の分身だと思う我が子に対して、

    「お前にもそういうところがある。」

    それがよく分かるんだと思う。

    自分の同世代の父親はみんな「優しく」て「理解のある」人達が多かったかもしれないけれど。

    自分が、そんな「失われた世代の父親」を持ったことは幸運だったと感じている。

    「お前のことがかわいい」

    死ぬ数年前に、喧嘩している時にささやいた父親の言葉。

    そういう経験を有する人間にとって、死ぬほど嫌われ、憎まれるオヤジ、という存在。

    そんな存在の本質的な有難さを理解することの大切さを、今の時代、「虚空」に向かって叫びたい気分でもある。

    私自身、そういう人間でありたいと思いながら、いつもこうして書いている。

    ささやかな行為であったとしても。

    石原慎太郎という人間はそういう感覚が理解できた人だったと思う。現代においてそれを貫いたことはとても珍しいことと思う。

    人の上に立つ人間が、何も憎まれず、嫌われず、だったなら、

    それは、リーダーとして「何の価値もない人間」であったことと同義だと思う。

    本当に何かをしたければ、世の中の半分は、本気で支持し、残りの半分は、殺したいほど憎むだろう。

    そういう人間を私は、イデオロギーの何たるかに関わらず、評価したいと思うのである。

    (写真 織田信長像)

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