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敵を知らず、己も知らずんば百戦危うし

平成27年7月5日 日本史
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有名な孫子の兵法では、

敵を知り、己を知れば百戦危うからず

ということになっている。

平安期頃には既に孫子の兵法は日本に入っており、源義家は、前九年の役、後三年の役で大江匡房から学んだ、「鳥の飛び立つところに伏兵がいる」という孫子の言葉を活用して戦に勝利した、という記録が残っている。

上記「敵を知り、、、」の言葉は言うまでもなく、戦いに勝つには、まず自分の置かれた状況を悟り、その上で相手の状況をも充分に知り尽くした上で臨まなくてはならない、という意味である。

孫子は、謀略の書籍であり、戦わずして戦に勝つ(戦う前に勝利する)ことこそが最強最高の方策であるという思想を前提としている。

兵を持つものであれば誰しも考えることであろう。自分の部下兵士を失うことの苦しみや悲しみを。

軍隊というと、戦争をしたがる集団というような認識があるけれども、戦争を最も恐れるのは、軍人自身ではないのか。

兵を失えば軍は疲弊する。軍が疲弊すれば国力は危うい。源平の時代以降、特に戦国期においては、名だたる武将の多くが孫子を用いた。

どういうわけか昭和期以降今日にいたるまで、日本では謀略は卑怯者のすることで卑しい行為であるように捉えられることが多い。

しかし、損害を最小限に抑えて戦に勝利することがどうして「悪」なのか私には理解できない。

中国は彼等の文化が生み出した多くの思想を既に失った。「徳」に基づく倫理思想はもう彼等現代中国人の思考からはほとんど感じることができないようだ。

しかし、彼等にあって、孫子の兵法だけは今だ健在であって、彼等の外交戦を見ていると露骨なまでに「孫子主義」であるように思われる。

あまりに露骨でえげつなさすぎて、見え見えだから、謀略にすらなっていないほどお粗末であるとも感じるけれども。むしろ現代においてもっとも孫子思考を深化させているのは、米英人かもしれない。

日本では、昭和期以降、江戸期の「葉隠思想」のようなものが跋扈して、戦とは死ににいくことだ、軍人の本望は死ぬことだ、とか、大和魂という言葉の一面的な利用を頻発させ、思考が単純化した面がある。

江戸時代は、侍、言わば軍人はとてつもなく暇で、存在意義が希薄であった。そういう暇な時代に生まれた葉隠のような思想なり、馬鹿正直で真っ直ぐで嘘がなく、正々堂々とした「スポーツマンシップ」みたいな武道的生き方に武士としてのアイデンティティーを求めたことは当然のことかもしれない。しかし、実戦となると、そのような考え方はいたずらに死人を増やすだけのことではないのか。

敵性言語と言って、英語の習得を禁止したり、戦力的に劣勢であるにも関わらず諜報情報戦を軽んじた作戦行動がみすみす多くの勝機を摘んだ。明治期に自らの劣勢を悟り、情報謀略外交を駆使して戦争に臨んだことと比較して、どう贔屓目に見てもそういう面の締まりのなさは、歴史を見て行くと明白に感じられる。

戦後になって多くの人達がこのことについて論評し、日本人の欠点として警鐘を鳴らしてきたが、未だその気風は変わっていないように思う。

中国人や韓国人やアメリカ人やロシア人に対し、感情的な反応はするものの、彼等がどんな文化歴史に根差し、どういう思考パターンで行動を起こすのかに関しての知識もなく、得る機会も、興味も少ない。

敵を知っていれば、彼等がどんな事を言ってきても、行動してきても、

「なるほど。そういうことね。」

と感じ、適正に対応するだけのことであり、感情的な暴発が起きる可能性はほとんどない。

戦争はイヤだ。平和がいいんです。

とか、

あいつは許さん。とんでもないやつだ。

とかそういうスローガンや感情レベルの言動を繰り返すだけの状況がもっとも「戦争に近い」状況にあることを自覚すべきだと思う。

無知ほど怖いものはないのである。

前九年の役 大和魂 大江匡房 孫子 後三年の役 源義家 葉隠

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