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グルジェフ 良薬は口に苦し 聖者の本音と人間の深層を教えてくれる

令和6年5月1日 文明論
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グルジェフというのは日本の昔のオヤジのような人である。

昭和期に生きた日本人のある程度の割合で、口うるさいオヤジに日々むかついた経験があるだろう。私もその一人だ。

「こいつさえいえなければ俺は幸せなのに。いっそいなくなればいい。」

顔を合わせれば喧嘩になる。

「不条理な存在」

存在自体が理解できないとさえ、若いガキの頃は思う。

しかしある時に思う。

もう彼に怒るのは止めよう。相手をしても意味がない。怒らない自分。いいじゃないか。それができれば俺も一人前だ。

そう思ったことさえあった。

しかし、父が他界し、年齢を重ねるとしだいに分かってくる。

オヤジの言っていることは正しいことが多かった。

自分に対して言っていたことの多くは自分にとって致命的な「問題点」であり「弱点」だ。それを自覚し改めることがもしできれば自分の人生は相当違っていたものになったのかもしれない。(実際には極めて難しいのだか。)

自分にとって信じがたいほど口うるさい、あの「ウザい」父親(人によっては母親かもしれない)は、いなくなってみれば、自分の本質を最も理解し、それを本心からなんとかしたいと心から思っていた「唯一」の人物だった。それが分かるのは彼らが死んでからということこそが人間という生き物の人生の悲劇でもある。

ある時、父親との喧嘩でこう言ったことがある。

「しつこいんだよ。なんでそんなにしつこくなれるのか。もうやめて欲しい。そもそも自分はどうなんだ。自分だって同じようなものじゃないか!」

「だからこそ言ってるんだ!たとえどんなにお前から嫌われようと、おれは一歩も引かんぞ!」

人は自分が嫌われることなどあえてしたくはないし、人に嫌われてまで相手の問題点などについて訴えるなどということはしない。しかもそのような行為はとてつもないエネルギーを必要(消費)とする。

父親は大正生まれの戦前派の人間だったが、戦前までの人間の信じがたいほどの精神力というものをその時知り、驚愕したことをはっきり記憶している。

そんな父がいなくなってみると、自分にとって彼以上に自分のことを、自らの存在を度外視(犠牲に)してでもなんとかしたいと思う人間などもう誰もいないことを知った。

話はグルジェフに戻る。

宗教的な、あるいは聖者の世界における「昭和のガミガミオヤジ」的存在こそグルジェフだと私は思う。

普通、聖者、例えば、ブッダでもいいしキリストでもいい。そういう魂の達人達は自分たちの世界を知った後、ある程度の期間、人間達を「何とかしよう」と思い試みただろう。しかし最終的にこう感じたに違いない。

「これは難しい。ほとんどの人間は私の言うことなど理解することはできないだろう。」

そしてさまざまに工夫して、最善の策をこうじる。

どんな人が聴いてもそれなりに納得し、気持ちの良い言葉を並べるが、本当にそれを理解できる人間だけが、自分の言葉の真意を理解できるような「教え」を考案するしかない。

悪い言い方をすれば、部分的な「責任の回避」である。分からない人間はどうしようもない。仕方がないから理解できる人間だけ私の知ったことを伝えることとしよう、という。

恐らくグルジェフはそれを理解した。しかし、彼は聖人世界、宗教界の毒舌芸人のような存在である。

彼は聖者の中の堕天使のように人間世界まで「堕ちて」きて、人間の内面の幼稚さや稚拙さを「意図的に」罵倒する。

人間の意識や魂の断片に対して「外的ショック」を与えることで、我々人間が自身の問題点に気づけるような意図をもってのことだ。

グルジェフはこのような内容のことを言っている。

「この世に存在するありとあらゆる宗教やそれに類するものの全てに絶望した者だけが私の言っていることが理解できるし、そのような人間のために私は語る。」

確かにそういう側面があると私は思う。

彼はその他の世界的な宗教的存在が語っていることだけでは理解できない多くの疑問。道を歩み挫折を繰り返してきた「飽きずに試みる凡人達」が「おそらく」疑問に思ってきたことや「これはおかしい」と感じてきたことに対して爽快なまでにみごとな回答を与える。

これほど「宗教的に」辛辣な人物はいないだろう。

宗教的なこと、スピリチュアル的なこと、あるいは心理学的なことも含めてそれに「癒し」や「なぐさめ」を求めている人にはグルジェフは向かない。止めた方が良い。

しかし、人間の本質や生死の本質、自分という存在の意義や理由。そのようなものをどんなことがあっても死ぬまでに求めない気が済まないと思う人なら、グルジェフは人生にとって有意義な真実のなにがしか、相当に重要なポイントを与えてくれるだろう。

グルジェフという人は昭和以前の日本の「オヤジ」のような人である。

興味のある人は、まずウスペンスキーの「奇跡を求めて」をお勧めする。

しかし、ウスペンスキーもグルジェフから去った。

その意味も含めてさらに深めていくことも「可能」だと今回は述べておく。

それは昭和時代の「ガミガミおやじ」が実はグルジェフだったということに繋がる。

グルジェフも「昭和までのオヤジ」その存在自体が変容のための「外的ショック」的存在だということ。

グルジェフ

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