「東洋が再び世界的に重要な地位に台頭し、、、いかにも非常に強いが、また非常に若くもあるアメリカに支配されている西洋の圧倒的に優勢な、つかの間の新しい文化にとって、東洋が脅威となる日が来る。
そのあとで、他人や自分自身を見るように、世界を見るべきである。一人一人の個人が、一つの世界そのものであり、地球-われわれみなが住んでいる大世界―は、ある意味において、われわれ一人一人の内側にある世界を反映した、あるいは拡大した世界にすぎない。
あらゆる指導者、救世主、神の使者たちの目的には、一つの基本的な、非常に重要な目的がある。
それは、人間の二つの面、したがって地球の二つの側が、平和に調和して共存できる手段を見出すことである。時間は緊迫しているー完全な大惨事を避けるには、この調和を可及的すみやかに達成することが必要である。
哲学、宗教等の運動は全部、この大目標を達成しそこなったーこの目標を達成する唯一の可能な道は、人間一人一人の発展を通して為される。
一個人がその人自身の未知な潜在性を発展させると、その人は強くなり、次には、もっと多くの人々に影響を与える。充分な数に足りる個人が、たとえ不完全でも、ほんとうの、自然の人間、人間に適切な真の潜在能力を使える人間に発展できれば、そのような個人の一人一人が、他の百人もの人間を納得させ、説得することができ、その百人のそれぞれが達成すると、別の百人に影響を与える。
人間を個人の存在としてではなく、「全体として」扱った政治、宗教、その他の組織化された運動のどれもが失敗したことは、すでに歴史によって証明ずみである。組織化された運動は決まって失敗し、世界中のそれぞれの人間の、個々の、個別の成長だけが、唯一の可能な解決を導く。」(「魁偉の残像」より)
グルジェフがパリのフォンテーヌブローにスクールを開設していた頃の言葉。1927-29年(昭和2-4年)頃と思われる。上記はグルジェフの下で少年期を過ごしたフリッツピータースという人物によって残された体験談に基づく。日本は昭和恐慌の直前直後くらいの時期にあたり欧州ではナチス台頭の時期に重なる。第一次・第二次両世界大戦間。
グルジェフの言う東洋の台頭には当然日本が視野に入っていただろう。しかし、この言葉は当時聞くよりも今聞く方がさらに真実味があるように見える。その意味で「預言的」である。人間を「全体として」扱ったものの多くの試みはこの後も繰り返し起こり、その失敗は証明され続けた。
組織化された運動は必ず失敗する。
仮に組織的なものが必要であったとしても、個々人の意識が発展した後、自然と組織化された、別の言い方をすれば「組織的な様相を一時的に形成している」もののみ有効であり、それ以外の、人間を「全体として」扱った「意図的な組織化に基づく人間の活動」は必ず目標を履き違え、疲労し、資金源化し、劣化腐敗し、悪辣化して衰退崩壊する。
組織ありきの組織化に基づく人間の歴史はただ同じことの離合集散の繰り返しに過ぎず、少なくとも過去2千年の歴史はそうであった。その中でもし成功したものがあったとしたら、その中の誰か個人の内面に何等かの「発展」があり、それが他の人々に何等かの影響を与えたことの結実であろう。

