田中清玄という人物がいる。戦前から極左と言われるほどのマルクス主義者であった。
しかし、海外の共産党からの指示を受ける中で次第に自己矛盾が起こった。
結果、彼は天皇主義に基づく社会主義思想に転じたという。
これは、江戸時代以前から脈々と連綿する日本人の「魂」としか表現できない、独自の世界観だと思う。
戦前、左翼思想家として、獄中に投じたが、獄中での思索の後に「転向」した経緯を戦後彼が記した文章を下記に記載する。
「幕末に朱子学と水戸学派によって著しくねじ曲げられた天皇だけが神であるというような狭隘な神道もまた、満足できるものでなかったことは言うまでもありません。毛沢東を絶対視した中国の文化大革命などは、私にとってはまったく気違いのたわごとにすぎませんでした。八百万の神といいますね、この世に存在するあらゆるものが神だという信仰ですが、この信仰が自分の血肉の中にまで入りこんでいて、引きはがすことができないと。そうしてその祭主が皇室であり、わが民族の社会形成と国家形成の根底をなしているということに、私は獄中において思い至ったのです。考えて考えて、考え抜いたあげくの結論でした」
戦後は、GHQなどと関わり、謎めいたフィクサーとしての生涯を終えた。

