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40歳を過ぎて気づいた「男はつらいよ」と小津作品の意味

平成29年6月17日 文化・文芸的
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自分は映画が好きで累計ならもう3000本以上は見ていると思う。しかし、自分と同じような映画好きがいる。

最近その人から電話があって、何か心に沁みるような映画ないかなあ、と聞いてきた。

「男はつらいよ見てみたら?」

そう言うことにした。彼のように、本格派思考の映画通は間違いなくこの映画に全くノータッチであることを確信していたから勧めたのだ。

「騙されたと思って第1作だけでも見てみなよ。それでつまらなかったら好みじゃないと思うけど」

自分の両親はこの映画が大好きだった。しかし、自分の若い頃、この映画の何がいいのかさっぱり理解できなかった。

下らない。下品。ベタベタでダサい日本映画の典型だな。

そう思ってた。

でも40代の半ばを過ぎたあたりでこの映画を見た時、心に響いていつの間にか泣いていた。人間の本質をついているような、それを馬鹿馬鹿しいテイストを装いながら描いているような。

理屈っぽいチャップリンの作品よりも本質的には深みのある作品かもしれない。そう思ったものだ。

日本人的ともいえるかもしれない、人間の心の豊かさ、人生の哀しさや滑稽さなどを簡易に、しかし見事に描いている作品だと思う。それが今更のように理解できた。

しかも初期の渥美清のセリフのキレの良さと表情と動作、表現力はまさに天才と言って過言ではないだろう。

知人が映画を見終わった後、連絡してきた。

「良かったよ。めっちゃ泣けた。渥美清って天才だなあ」

いつもは超辛口で、タルコフスキーだのワイダだのヘルツォークだの世界の一流の巨匠みたいなお堅い作品が大好きな彼なんだが、俳優を天才だと言ったのを始めて聞いた。

いつの間にか私よりも多くの作品を見終わっていて「男はつらいよ」専門家のようになっていたのには驚いた。

この映画の「神髄」を理解できて初めて、小津安二郎映画の神髄も理解できた。

コンセプトは同じなのである。小津作品をエンタメ風に分かりやすく庶民的にしたのが「男はつらいよ」なのだ。

個人的に小津作品を再評価するきっかけにもなった。若い頃は、薄っぺらい視点でしか小津作品を感じることができなかったことも理解できた。

歳を経て、観方の変わることがあるものだ。

この作品は、最も「日本的な」良さや魅力やらを含んだ映画のひとつであることは疑いようがない。

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