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    鹿児島市内での心に沁みる出逢い

    令和3年4月27日 コラム
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    一人旅には思わぬ忘れがたき出逢いが時としてある。鹿児島へ行った時のこと。

    屋久島の縄文杉を見るには朝の4時に起きて山道入口から出発すると、昼頃に到着する。現地滞在はわずか20分ほど。そのままもと来た山道を降りて宿泊先に到着するのは夜の6時を過ぎる。

    しかし相当な神社に匹敵するくらいの神聖さがある。若い時か、山登りに慣れていない人は途中のウイルソン株という中継地点でリタイアすることも多いという。

    屋久島の縄文杉は行って損することのない日本の聖地のひとつであった。

    さて、屋久島から船で鹿児島市内に戻り、天文館という鹿児島の繁華街を歩き、古びたビルの2階か3階にあるような、地元の常連しか入らないような小さなスナックにたどり着いた。

    「屋久島に行って来たんですが、屋久島の女性は何となく、ぶっきらぼうで愛想がないように感じだけど、実際どうなんですかねえ。」

    屋久島で、宿泊先や売店やその他の施設などにいる女性から受けた印象をスナックのママさんに話した。

    「自分は種子島出身だけど、種子島は平ぺったい島。屋久島はその逆。そんな地形にも関係するのかもしれませんねえ。自分の地元では、屋久島の女には関わるな、とよく言うんですよ。」
    東京では「女坂」「男坂」というのを時折目にするけれど。確かに屋久島は海からいきなり急峻で平地がほとんどない。南国にも関わらず、山の上のほうでは雪が積もる。

    はじめ、お店にはママさんと私の他に客はいなかったが、そのうち数名の客と少し年配の女性が来た。その女性は私の隣に座り相手をしてくれた。

    話の内容は覚えていないが、いつものように鹿児島のおいしいものについての話が多かったように思う。

    ほがらかで、明るくよくしゃべる女性で丸顔だったのを覚えている。鹿児島の女性を思わせるような風貌というふうには感じなかったが、明るく開放的な性格のおかげで場は盛り上がった。やがて彼女はこう言った。

    「じゃあ。私がおいしいお店に連れてってあげるから一緒に行こうよ。」
    「でもお店があるんじゃないの。」
    「今日は早めにあがるから。行こう。行こう。」

    彼女はそう言うと、ママさんに了解をとった。

    私は、彼女の肩越しの、カウンターの向こう側に座っている、おとなしそうな50代くらいの男性と目があった。思わず私は、

    「良かったらご一緒にどうですか?」

    そう言うと男性は驚いたように目を見開いて私を見ながら、

    「えっ。いいんですか?」
    「ご迷惑でなければ。」

    3人でお店を出ると歩いてそんなに遠くもない居酒屋に入った。何が特徴的ということもなく、食事がおいしかったという印象もなかったが、頼んだ料理が来ると、彼女は箸で料理をつまんで、そのまま私の口に入れようとする。

    「は~い!おいしい?」

    手とり足とりされるのは自分の趣味にはあわないが、彼女の明るさと押しの強さもあって、されるがままにしばらくそれを繰り返した。

    「鹿児島の女性はこんな感じ?」

    驚いた私は、冗談交じりに言った。

    「鹿児島の女性は男をたてるよ~。」

    鹿児島と熊本の女性は、よく「男をたてる」という表現を使う。「つくす」とは言わない。私の印象では、鹿児島や熊本など南九州の女性は男をおだてて、良い気にさせ、男を気分よく働かせる能力にたけているのではないかと思うことがある。

    鹿児島の女性は分からないが、父方の故郷でもある熊本の親戚の女性などをみると、強さや逞しさを感じることが多い。威勢がいいとでもいうのか。

    「熊本のおなごは強かけん」

    最近は九州男児もおとなしいものだ。

    話は居酒屋に戻る。

    私とその女性が馬鹿話で盛り上がっている間も、誘った男性は静かに、ほとんど何もしゃべることなく静かに飲みながら、私達のやりとりを眺めていた。

    「なんだか、勝手に誘ってしまってすいませんでした。」

    私がそんなニュアンスのことを言うと、その男性は申訳なさそうに口を開いた。

    「お店の人に誘われて一緒に酒を飲みに連れていってもらうなんて、自分の人生でこんなこと初めてなんです。だからうれしくて。」

    言いながらなんとなく目頭があつくなっているように見えた。それを見た時、彼の人生の「ある部分」が私の魂の中に静かにしみこんできたように感じ、深く感銘した。

    「よ~し!今日は楽しく飲むぞ~!」

    それからの記憶は朧気(おぼろげ)だが、2軒目に鹿児島ラーメンの店に入りラーメンを食べてお開きになったと思う。別れ際、私はその男性に、

    「またあったらその時もまた一緒に飲みましょう」

    彼は嬉しそうに微笑んでいた。

    それから鹿児島にはもう何年も行っていない。旅先の出逢いははかない。

    こんな沁みるエピソードが自分にはいくつかあるが、どういうわけか、そんな出逢いは、日本の東の端か西の端の、中央から遠く離れた場所に多いような気がする。

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