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    神々の二つの流れが生み出す歴史的対立軸と天皇の求心力

    令和5年6月24日 日本文明・神社・神道
    神々の二つの流れが生み出す歴史的対立軸と天皇の求心力
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    どの国の歴史にも歴史を一気通貫で流れる「霊的」な対立軸というものがある。

    西洋史の根源にある「霊的」対立軸は古代まで遡るとユダヤ教とキリスト教の問題があり、中世以降はカトリックとプロテスタントの問題がこれに重なる。欧州における霊的な求心力はローマ教皇しかないが、キリスト教自体がカトリックとプロテスタントに分裂しているため、ローマ教皇の求心力には不完全性が常に内在していると考えるべきだろう。EUが「欧州」という枠組の永久的求心力になり得ない決定的な理由がここに内在している。

    歴史は今を生きている個人やその集団によって展開されるのではなく、一種「霊的」な無意識世界の総意によって紡がれていく。一見すると今を生きている人たちや有力な個人が中心になって展開されているように見えるがそれはごく上辺だけの世界であり、歴史の氷山の一角に過ぎない。

    日本の神々の世界には大きく分けて二つの流れがある。細かく見ていくとその二つからさらにいくつかに枝分かれしたり、どちらかの流れの中に入っていたりするが大きくみて二つだ。その二つの流れを一つにまとめる求心力があるのは日本の歴史においては天皇以外存在せず、これは欧州のローマ教皇に近い。

    個々人が天皇が好きだろうが嫌いだろうが、日本の神様の世界が好きだろうが嫌いだろうが、興味のあるなしに関係ない。なぜなら本人の「表面意識」と、個々人の意識の根源に根づいて言動の如何に大きな影響を及ぼす「霊的」世界からなる意思とが、完全な形で意識的に結びついているわけではないからだ。

    さらに言えば、今ここで書いているような「霊的世界」の話をすると「ばかばかしい」と感じている人たちですら実際に彼らを動かしているのは、このような「霊的」ファクターである。

    日本という国では「天皇」という求心力を失い、低下すると、神々の世界が分裂し始め、個々の神々が勝手なことを言い始める。それが人間の言動に反映していく。

    江戸時代までの日本は今で言えば欧州のような分裂国家の集合体だ。別の言い方をすると連邦国家や合衆国に近い。

    江戸時代の藩は、欧州で言えばドイツとかフランスとかポーランドのようなものと言っていい。江戸時代以前はそれぞれの地域を「国」と呼んでいた。山城国とか播磨国とか。江戸時代までの日本国内の言葉(方言)の違いは欧州で例えればドイツ語とオランダ語、イタリア語とスペイン語、ロシア語とチェコ語などの類似よりもさらに乖離した地域同士もあった。関東方言と関西方言の違いは、スウェーデン語とノルウェー語の違いよりも大きいだろう。

    天皇の求心力が高まれば日本列島の一体性は高まり、弱まれば分裂する。幕末から明治時代において、先見ある日本人たちが天皇の求心力を高める必要性を無意識に痛感して、国学が起こり国家を強固な中央集権的統一へ向かわせた「危機管理能力」の高さは改めて見直す必要があるだろう。

    昭和20年8月以降、国家としての求心力の軸にあった天皇の制度的な地位と権威は地の底に落ちた。しかし昭和20年8月以前を生きた人が存命である間は、国家制度としての天皇の求心力が落ちても、個々人の思いの中に天皇への強い求心力が存在していたことで、国としての一体感が保たれ、その「余力」が戦後復興を果たし、さらに高度成長を実現したと言えるだろう。

    戦後の日本の組織には、企業の力や求心力が衰えると「外国人」にリーダー役を任せる事例がある。マッカーサーがその先駆けであり、その後は枚挙に暇がない。日産のゴーンなどが典型であろう。これは日本の国家としての求心力が失われた未来の見取り図にもなる。

    平成以降の日本は徐々にリーダー不在が顕著になり、国内の政治力や組織力の弱さに付け込んで複数の外国勢力に深く介入され、国家や組織としてのコントロールを失っているように見えるが、これも元をただせば天皇の求心力の減退からくるものだろう。

    日本人というのは本来自分達が考えている以上にバラバラだと自覚すべきである。

    政治もそうだが、企業や組織、親族内、地域間に横たわる人間模様や勢力争いの構図などにも必ず「神々の二つの流れ」から織りなす霊的な対立軸が内在している。本人達は気づいていない、自覚がないだけの話である。

    争いの中心になっている人たちの先祖やファクターを調べれば、地域性、関わる神々の系譜、歴史的系譜に一定のパターンが必ず存在するはずである。

    近年よく見かける対立軸は長州と会津の系譜であろう。長州人が明治以降の日本を支配しておりいまだにそれは続いている。これは悪しき「陰謀」であり、江戸以前の日本に戻らなければならない。と言ったような意見は典型的なものだ。こういう意見を強く叫ぶ人は恐らく会津に関わる霊的な系譜がある。これも神々の二つの流れの派生品のようなものだ。

    確かにそういう一面はあるかもしれない。しかし江戸以前に戻れるはずもなく、江戸以前がバラ色の世界だったわけでもない。江戸以前の方がより「日本的」であることは間違いなく、現代人がそこにフォーカスして自分達の本来の姿を取り戻そうとすることは必要なことでもある。

    一方、会津が長州人に散々な目にあって恨み骨髄だったとしても歴史を遡れば、関ケ原における家康の「処断」からくる長州人の恨みも深い。明治からはまだ150年ほどしか経過していないが江戸時代は260年である。長州人の恨みも深いと考えなければならないだろう。しかし、こんなことを言い始めたらヤクザの抗争と同じで永久に切ったはったを繰り返すことになるに過ぎないことを双方自覚すべきだ。

    歴史を見れば、明治維新の原動力の源泉は水戸学にあり、吉田松陰も水戸学の影響下で自らの思想と言動を高めたことは間違いのない事実であり、明治維新という結実も薩長勢力の勝利の結果という以上に、それが当時の日本人の総意の結実だと考えるべきだろう。当時の諸藩の諸侯達がほとんど文句も言わずに自らの権力や影響力を手放したという事実は世界史の奇跡と言っても過言ではない。それを成しえたものは「天皇」の存在以外の何物でもない。

    もちろん近年指摘されているように明治以降、欧米の資本力が介入し、あるいは文化的に日本らしさが徐々に失われた面はしっかりと見ていかなければならない。しかし、少なくとも昭和20年8月までは、日本文明を古代からの一貫性あるものと認識する必要があるだろう。

    飛鳥時代以降に大陸の文化が大量に流入したことと、明治以降に西洋の文化が大量に流入したこととは同意と見るべきだが、飛鳥時代の流入による変質の方が恐らく明治以降の変質よりもはるかに大きいだろう。しかしそれでも日本文明が失われることはなかった。その中核に天皇がいたことは疑いようもない。

    最近、天皇の影響力は江戸時代まではそれほどではなかったという話を時々見かける。戦前でも北一輝が同じようなことを言っていたように思える。しかし、そうではない一つの歴史的資料を最後に示す。

    ケンペルは江戸時代初期(元禄時代)に出島のオランダ商館に勤務したドイツ人医師。彼の著書「日本誌」の中でこのように語っている。

    「宗教的世襲皇帝の王朝(天皇のこと)は、キリスト以前の660年がそのはじまりである。この年からキリスト紀元1693年(江戸の初期、これはケンペルが当時江戸にいた時期のこと)にいたる期間、すべて同じ一族に属する114人の皇帝たちが相次いで、日本の帝位についた。彼らは、日本国の最も神聖な創建者である“テンショウダイジン(天照大御神)”の一族の最古の分枝であり、彼の最初に生まれた息子の直系である等々のことを、きわめて誇りに思っている。」

    このような価値観が江戸時代水戸学と国学を産み出した源泉にあるとみるべきだろう。

    (写真:令和元年「即位礼正殿の儀」より)

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