日本人が失ってはならない心― 吉田松陰と西行の示す日本人気質
日本人には戦略がないというのはもう何年も前から言われている話だが、先日のランド研究所からの内部リーク文書の話などは、多くの日本人は「こんなものは陰謀論だろう」とヘラヘラ笑うような人間が多いような気がする。しかし、そういう体質こそ、日本人の戦略観の欠如を物語っているように思える。
英米人は、国際社会の中で自分達の立場を優位に保つために常に相手の動向を観察して、それに対抗するための戦略を練り続けており、その戦略に沿ってさまざまな工作を日夜続ける。彼らは四六時中戦争しているような連中だ。
日本人は、見た目の「戦争」にしか反応せず、ロシアがウクライナに攻め込むと、ロシアが戦争を始めた。ロシアは悪い奴らだ。と騒ぎ始め、ようやく興奮し始める。
しかし、英米人はとっくの昔から戦争を始めている。戦争は武器を使って殺し合いをすることだけだと考えているのは、日本人だけだろうか。
「世界から恐れられた七人の日本人」
という書籍を見ていた。戦前の日本人の諜報能力は実は非常に優れていて、優れた諜報活動を行った優秀な軍人達がいた、という内容の話の書籍だが、ではなぜ日本は負けたのか、というくだりで、以下のようなことが書いてあった。
長くなるが、以下に引用する。
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日本には計画プランがなかったのです。 中国と戦争するので手一杯で、あとは上からソ連が来るのを何とか止めるということで、アメリカとかイギリスは関係ないのです。
山本七平という有名な作家、この方もフィリピンで将校として戦った方ですけれども、この方は著書『日本はなぜ敗れるのか 敗因 21カ条』という中で面白いことをおっしゃっています。
「ドイツ人は明確な意図を持ち、その意図を達成するため方法論を探求し、その方法論を現実に移して実行する組織をつくりあげた。たとえ、その意図が 狂気に等しく、方法論は人間でなく悪魔が発案したと思われるもので、その組織は冷酷無情な機械に等しかったとはいえ、意図と方法論とそれに基づく組織 があったことは否定できない」
ということです。しかし、日本の場合「支那事変の当初から明確な意図、プランとかそういうも の は どこにもなかった存在しなかったと言っていい」 というのです。
「ただ常に相手が来たからリアクションでこうすると、アクションがあってリアクション をするということで、ヒステリックに反応するという、出たとこ勝負を繰り返しているに すぎなかった」ということです。
つまり意図intention ( イ ン テ ンション ) とかプランがないから、それを達成するため のmethodology (メソドロジー)というか方法論もないのです。
従って、それを準備するための組織、チームとかオーガニゼーションもないわけです。だから、何かが起こると「あっちのチーム、こっちのチーム、ガッチャンコして集めて、そしてやろう」 と、次にこちらに起こると「こっちこっち、引っ張ってやろう」と、こちら にまた起こると「これとこれをつなげてやろう」と、もうめちゃくちゃになってしまうのです。
日本は計画そのもの、grand strategy (グランド・ストラテジー)がなかったのです。ドイツ は、まずはgrand strategy (グランド・ストラテジー) を作って、そして例えば「ユダヤ人をやっつけるんだ」とか、「ポーランドをやっつけるんだ」となったら、そのために全部を作ります。
そもそも、何でドイツが昔から東欧へ行こうとするのかというと、あれは食料確保のためなのです。第一次世界大戦の時に、ドイツはイギリスの海軍による海上封鎖を受けて、75万人が餓死というか栄養失調で死んでいるのです。ドイツのテリトリーだけでは、十分な食べ物は作れないのです。
だからナチスは、東ヨーロッパとかソ連の方に行って、その地域のスラブ人を殺して、そしてそこで食料生産をやってドイツに食料を送るということをずっと考えていたのです。
だから、そのための準備をしたのです。(以上、引用)
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ドイツのロシアからのパイプラインの建設とエネルギーの供給は、ドイツの米国からのくびきを脱して、EU圏内での地位を確たるものにするための戦略だった。
それを絶とうとしたのが、米国のウクライナへの介入と実質的な支配の目的の主要な理由の一つだとランド研究所のリーク文とされる文書は語っているが、ドイツにはやはり戦略があるということになる。
戦後の英米の覇権戦略は、日独の勢力を削ぎ、弱体化させ続けることだったが、日本に対しては、憲法九条と日米同盟でくびきをかけることに成功した。
しかし、ドイツの場合は、NATOという強力なバックアップ体制があり、NATOを米国からの影響力を削ぐことに成功すれば、EUは米国から自由になるし、EU圏内の覇権国ドイツは欧州で主導的地位を得られることになる。
EU(ドイツ)は、さらにロシアをも取り込もうと画策したのかもしれないが、プーチンはそれを見抜いていただろうし、同時に英米の意図も充分に熟知していることは言うまでもない。
戦後の英米のグローバリスト達の戦略の主要な眼目は、日独を、政治的、軍事的、経済的に、米国を凌駕する勢力になることを「決して」させず、同時にソ連(ロシア)の影響力、軍事力、政治力、自立性をも弱体化させ「支配」することだと言えるだろう。
主として、彼ら(英米の背後のなにがしか)が、中共を「肥大化」させた目的の一つには、自分達が私腹を肥やすことにあっただろうが、同時に日露へのけん制、あるいは弱体化という目的も兼ね備えている。
英米、というよりもそれを実質的に背後で支配しコントロールしてきた勢力のグランドストラテジーが目に見えて明らかになってきたのが、2020年の米国大統領選以降のことであり、ウクライナ問題も当然その主要な活動領域であることが明らかになった。
日本は、戦前の失敗を未だに繰り返しているだけだというのは、岸田政権を見ていれば明らかだ。
「ただ常に相手が来たからリアクションでこうすると、アクションがあってリアクション をするということで、ヒステリックに反応するという、出たとこ勝負を繰り返しているに すぎなかった」
と山本七平氏が言っている状況と何も変わらない。
常に相手の出方にリアクションするだけ。
日本人は有史以来基本的にそれで「やれてきた」からそれ以上のことを考えるのが面倒なんだろう。これは政治だけではなく日本の組織全体に言えることでもある。
日本の農業の危機が今叫ばれているが、農民は呑気なものだという。
「まあ何とかやってくれるだろう」
農民の大半はそんな風情なんだという話。
日本は島国だから、平和でいられたんだ、という説がある。
確かにそれも大きなファクターだろうが、それだけで、日本が今のような繁栄を勝ち得たわけでないことは、同じ、島国である英国やフィリピン、台湾(日本統治以前と以降ではまるで歴史が違う)を見れば明らかだ。
では、日本に「勝因」があるとすればそれは何か。
「神々に守られた土地だから」
と言える。
こんなことを言うとまた、多くの日本人から、ヘラヘラとした笑い声が聞こえてきそうだ。
しかし、
「実際これ以外にさしたる理由がない。」
というのも事実である。
だから、日本人は信仰しろ
とは言わないが、少なくともそういう、古代から培ってきたものを大切に思う心を持ち続けることは日本人にとって極めて重要な、あるいは最も重要なことであるのは間違いない。
その心を失った時、この国は確実に滅びるだろう。
吉田松陰の有名な以下の言葉は日本人の日本人たる心の在りようをよく表している。
「かくすれば かくなるものと 知りながら 已むに已まれぬ 大和魂」
あるいは、西行のこの言葉。
「 なにごとのおはしますか知らねども かたじけなさに涙こぼるる」(伊勢神宮にて)
こういう心を日本人が失った時、日本は確実に滅びていくだろう。
なぜならば、国際社会から見た時、日本人にはこれしか強みがないからだ。
(写真:西行像)

