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グローバリズムとナショナリズムと日本(5)

平成26年4月30日 文明論
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パリ市内にアンヴァリッド(Les Invalides)、日本語では廃兵院という建造物がある。17世紀、ルイ14世が傷病兵を看護する施設として建設したものだ。ここにナポレオンボナパルトの棺が安置されている。大きなドーム状の部屋の中央に高々と彼の遺骸の入った棺が置かれている。非常な威厳を持った空間である。周りを多くの観光客が取り囲み、この中にあのナポレオンボナパルトが眠っているのかと、畏怖と興味の入り混じった顔つきで眺めている。

日本人なら、ナポレオン神社を建立していることだろう。神社と墓地は意味合いが全く違う。墓地はあくまでも墓地だ。東郷神社の本殿に東郷平八郎の遺骨が納められているわけではない。

東郷平八郎命と書かれた符が安置されているだけだ。肉体を脱し純化された魂の住処が神殿となる。だから本殿内は物質的な装飾も極力控えられる。鎮魂帰神というのは魂を鎮めて神と一体化することである。

同じくパリ市内に、奇跡のメダル教会(Chapelle Notre-Dame de la medaille Miraculeuse)という教会がある。19世紀にカタリナラブレという修道女が聖母マリアから啓示を受けた。その時の啓示を基にして作成されたのが、「不思議のメダイ」という卵型のメダルである。

キリスト教信者なら誰でも知っている有名なメダルだ。彼女の遺骸がこの教会内に安置されている。ミイラ状態で、ガラス張りになっており、彼女の姿を見ることができる。非常に敬虔な信徒達がガラス越しにひざまづき礼拝している。私もガラス越しに拝見したかったが、非常に張り詰めた空気に満ちていて、近づくことは憚られた。

キリスト教は、このように、その教会由来の聖職者の肉体や肉体の一部(心臓とか手とか)をそのまま拝殿内に安置し、これを聖遺物として礼拝する習慣がある。

その他、中央祭壇及び教会内にあるのは、イエスキリスト、聖母マリア、天使、その教会由来の著名な聖職者などの像や画などが主である。中央祭壇を見ていると、仏教の曼荼羅を思わせるものがある。また、教会内のいたるところに、過去の司祭や、その教会に深く関わった人物の棺が、雑然と置かれていたり、床の下に埋められている場合もある。教会の地下が墓地になっていることもある。

これは、日本の神社では考えられないことである。陵墓となる山の上に本殿があったり、本殿後方や周辺の山などが陵墓になっている場合はあるが。

また、聖書では偶像崇拝を禁じているが、欧州の教会には多くの像が安置されている。これは、キリスト教が欧州地域に入る以前からの文化の影響によると言われているが、偶像がないという意味では、欧州地域の教会よりも、日本の神殿のほうが「聖書的」なのかもしれない。

そして教会には、日本の神社のように、その土地の歴史につながるような存在や、その土地に住む人々の先祖につながるような存在が祀られていることはない。

信仰者個人と神及びその世界を直接つなげることはするが、その土地や地域やそこに暮らす人々に直接関わる存在を結びつけることはない。

欧州は美しいが、歩いているとそのような感覚がすぽっと抜け落ちているのを感じる瞬間がある。その意味で個々人の魂が、より孤立しているのかもしれない。ヨーロッパにも神道の仕組みを取り入れて欲しいものである。主祭神はイエスキリストで良いのであるから。(つづく)

(写真: アンヴァリッド内ナポレオンボナパルトの棺、カタリナラブレの遺骸、不思議のメダイ wiki)

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