宮崎市内から車で15~20分ほどであろうか。木花台という場所がある。宮崎大学などがある、閑静な文教地区である。
ここに、その名の通り、木花神社という神社がある。
由緒によると、瓊瓊杵尊は、この地で国神大山津見命の娘木花咲耶姫を見染め結婚した、とある。
また、付近には、「霊泉桜川」という井戸がある。木花咲耶姫が三皇子を産んだ際にこの井戸の水を産湯に使ったという。三皇子とは、火照命(海幸彦)・火闌降命、彦火火出見尊(山幸彦)のことである。山幸彦の孫が神武天皇となる。
木花神社は、三皇子を生んだ、産屋「無戸室」(うつむろ)の跡という。
とすれば、この場所は、日本神話史上、非常に重要な場所なのであるが、人知れずひっそりとした所で、ともすればこのまま朽ち果ててしまうのではないかと思われるほどの静まりようであった。
宮崎県を散策して思ったことだが、神話の国と言いながら、このように重要な神話上の場所や神社などを含め、あまりしっかりと管理されていないところが多いのである。予算不足なのか。観光が大きな財源のひとつとなっている県であるだろうから、もう少ししっかり管理して欲しいものである。
「霊泉桜川」は、「桜川」という謡曲の題材にもなっている。
むかし、この泉のほとりに、貧しい夫婦がいた。それを見かねた桜木(子)は、自ら人買に身を売り、金を夫婦に残し、人買に連れ去られた。母はそれを嘆き悲しみ、子を探し求めて諸国を旅し廻った。その後、常陸の国、桜川で、僧侶となった桜木(子)と出会い、共にこの地に帰って幸せに暮した。桜木(子)は、木花咲耶姫に祈願して授かった子であるので、ご神霊の加護によって、この子を探しあてることができたのである。
そういう話の謡曲である。

