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祟るということ

平成27年5月23日 日本文明・神社・神道
安徳天皇
安徳天皇
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世間一般で祟るというと、何か悪しき存在が災いをもたらす状態のことであると解釈されているが、元来、「たたる」という言葉は「たつ」から来ているとされ、「たちあらわれる」状態のことを言うのだという。神の祟りというと、神がその威力をあらわす状態のことであるとされていたようである。

「神の祟り」というと、古来日本では、地震、落雷などの天災や疫病や飢饉の流行などの起こりを言うことが多い。旧約聖書などでも、ユダヤの民に対して非常な苦しみや苦難を与えて、警告するなどのことがあるがこれもまた「神の祟り」ということができるだろう。

チベットの「死者の書」を読むと、人の死後、魂が死を悟るために四十九日の間さまざまな方法で、仏あるいは神の化身のような存在が、死者の魂に働きかけるが、はじめは優しく働きかけるも、なかなか死を悟れない魂に対しては、凄まじい憤怒の形相の恐ろしい化身が現れて死を悟らせる。憤怒神と言ったりもする。これもまた祟り神の一種であると言えるだろう。

いずれにしても、神が人間に祟るのは、神から人間へ警告を発している状態であり、言い方を変えれば、「神の愛」の現れであるとも言える。神の人への愛情表現のひとつとして、神は人間に祟るのである。

ご先祖様の祟り、というと子孫が病気やさまざまな災いが起こった時に使われる言葉であろうが、これもまた先祖が子孫に対して「警告」を発している状態であり、先祖の子孫に対する愛の現れであると言えるだろう。

こう考えると、親が子に対して烈火の如く怒る、という状態も「親の祟り」ということが言えるかもしれない。親が子を愛する表現方法として、親が祟るのである。

日本の祟り神もまた、人間に対する愛情表現のひとつとして、祟っているのである。平将門の神霊は祟り神であるが、同時に関東や江戸の守護神でもある。平将門の神霊という祟り神は、関東という土地への愛情、そしてそこに住む人間への愛情あるがゆえに祟っている。日本国の土地の祟り神は出雲大社の神様と言えるかもしれない。伊勢と出雲は一対なのである。日本では祟り神は守り神となる。この国では「怨」と「愛」は表裏一体のものなのである。

「怨」を「愛」に転化させる装置。これが神道における祀りの構造のひとつである。こういう装置があるのは、恐らく世界でも非常に稀なことで、ちゃんとしたものは日本にしかないのではないか。聞いたことがない。水天宮の祭神は安徳天皇であるが、幼くして崩御された天皇霊を祀ることによって「安産祈願」の神様へと転化する。マイナスをプラスに逆転化するこの発想は世界的にも稀な非常に優れた仕組みである。

祟られるということは苦しみを伴うものであるかもしれないが、我々人間にとって、有難い状態であると思って差し支えなかろう。

(写真:安徳天皇 from wiki)

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