天壌無窮の神勅と申命記
天壌無窮の神勅とは、日本神話における三大神勅、すなはち神から与えられた最も重要な言葉とされているが、その中で最も重要とされているのが、天壌無窮の神勅である。
古事記にも日本書紀にも記載はあるが、日本書記から引用する。
「葦原の千五百秋(ちいほあき)の瑞穂の国は、これ吾が子孫(うみのこ)の王たるべき地(くに)なり。宜しく爾(いまし)皇孫(すめみま)就(ゆ)いて治(しら)せ。さきくませ。寶祚(あまつひつぎ)の隆(さか)えまさむこと、まさに天壌(あめつち)と窮(きわま)り無けむ」(原文:葦原千五百秋之瑞穂國、是吾子孫可王之地也。宜爾皇孫、就而治焉。行矣。寶祚之降、當與天壤無窮者矣。)
(日本国は、神の子孫が王(天皇)となるべき土地。邇邇芸命よ皇孫(神の子孫)であるあなたが行って治めなさい。皇室(寶祚)が栄えることは、天地がある限り永遠である。)
先述の申命記の一節と比較すれば、その類似性は明確である。
「いと高き神が国々に嗣業(神によって分け与えられた引き継ぐべき土地や財産のこと)の土地を分け/人の子らを割りふられたとき/(いと高き)神の子ら(神々)の数に従い/国々の境を設けられた。 主(ヤーウェ)に割り当てられたのはその民/ヤコブが主(ヤーウェ)に定められた嗣業。」(旧約聖書申命記三十二章第8項から9項)
イスラエルの民は、引き継ぐべき嗣業、すなはち土地を失い、民族が離散したことから、「唯一神教」という形をとるにいたり、神と神々の世界にある本来の姿を自ら封印した。あるいは神の意志により、そうならしめられた。
旧約世界の宗教とは、「緊急事態」の宗教であると言えるだろう。
2010年時点の統計では、キリスト教は21億7千万人、イスラムが16億人で、合わせて約38億人であるが、世界人口は、69億人であるから、55%以上がこの二大宗教に属していると言える。(ユダヤ教は300万人程度と推計)
私の目から見れば、この38億の民もまた、「嗣業を失いし民」あるいは「緊急事態の民」に見える。もちろんみなそれぞれの土地に暮らしてはいるだろけれども。幸せなものもいるだろう。
一方で、「葦原の千五百秋の瑞穂の国」の地を与えられたのは、日本人であったが、日本人がこの土地を神々から与えられたことを忘れてしまうならば、ユダヤ民族のような末路を辿らないという保証はどこにもない。
旧約の神が、その怒りをもって神威を現す時、地震や洪水をもって行う、と言われるが、日本の神々も全く同じである。
日本人とユダヤ人は合わせ鏡のような関係にある。
神道において、重要なのは「土地」であると書いたが、旧約世界の宗教においても実はそうなのである。
【嗣業】神によって分け与えられ受け継ぐべき財産、特に土地を指す。

