満州国成立までの過程と大日本帝国崩壊の真因とは

倉山満氏は、ポジショントークをしない人で、あたかもその時代の人が直接現代人に語り掛けているような臨場感とリアリティのある文章を書く人だと、知人から話を聞いたことがあるが、この書籍はまさにその愁眉とも言える傑作であろう。

当時の日本や世界を巡る空気感が実によく伝わってくる。単調でインチキ臭い理念やお決まりの「思想」を振り回して結論ありきのお安い歴史書とは一線を画している。

ただし、この書籍はある程度当時の歴史に詳しくないと良さを理解できないかもしれない。自分も知らない事実や、考えていることと違う真相などが書かれていて非常に参考になった。

大日本帝国が滅んだ原因はいくつかあるが、その重要な視点が、満州という地域紛争を巡って描かれていく。

明治の元勲が健在であった頃は、国際社会における「遊泳法」に問題はなかったが、明治時代の政治家達の影響力がなくなってくると、俄然日本的な「役人根性」が軍事にも政治にも支配されはじめる。

事なかれ主義。周囲に忖度ばかりして信念がない。正論よりも空気感重視。下の暴発に対して上層部が全くコントロールできない。甘い、あるいは奇妙な人事。こういった事案が頻発していく。予測不能なテロなどが起きて予定が狂っていく。そのプロセスがこの書籍を読むとリアルタイムで見ているようによく分かる。

倉山氏は「大日本帝国崩壊」の決定的なきっかけを「憲政の常道」の崩壊に由来すると語っている。

決断力も統率力も国家運営における信念や意志も希薄な、役人の中堅管理職みたいな人々がお役所仕事で政治や軍事の中心を支配するようになった時、国家は消耗し、やがて滅ぶ。というのは大東亜戦争における日本の敗北へのプロセスを見ている中で以前から感じていたことだが、その考え方をさらに「もう一歩」深めさせてくれる書籍。

類書が見当たらないほどの貴重な書籍だと思う。

現在の日本政治の現状と昭和初期から大東亜戦争終結までの政治的状況は酷似している。

菅首相が「役所の縦割り」を撤廃するような政策方針を打ち出したが、それが成功すれば、日本政治行政の悪弊、これは戦前から継続しているものだが、それを変えうることになるだろう。しかし、それがどこまでできるのか、非常に難しいだろうが、できれば歴史に名を残すことになるほどの重要な課題である。

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