この文章はピーター・ティール氏の脳内を駆け巡っているものをそのまま文章化したようだ。主として聖書、ギリシャ・ローマ思想などの知識が求められる文章だが、文章そのものの意味よりもそこに散りばめられている暗喩的メッセージ(?)に興味をひかれた。

文章の全てを理解したわけではないが一読して得られた感想を書き留める。

ここでは4つの作品が紹介されそれぞれに意味づけがなされる。

フランシスベーコン「ニューアトランティス」

ニューアトランティスとされるベンサレム島。この島は南米ペルーから船に乗って西へ5か月のところにある。旧アトランティスは腐敗したためベンサレム人はこの島へ逃れた。ベンサレムは非常に技術が優れた島。ベンサレムはヘブライ語で平和の子。安全の子を意味する。

ベンサレムを支配する人物の一人としてジョアビンがいるが彼は失われたイスラエルの部族の末裔であり、反キリストだという。「先祖の神々を無視し、女の愛も顧みない。」彼の出現を告げる言葉は「平和だ、安全だ!」

ペルーから西に5か月の島。5か月という距離は別としてこの島を日本だとしても不思議ではない。

「平和だ、安全だ!」

これは、あたかも、戦後の日本を表現しているように見える。

この後、「反キリスト」とは何かについての言及が続く。

ジョナサンスウィフト「ガリバー旅行記」

主人公のガリバーは良きキリスト教徒だと主張している。航海の途上で日本の海賊に捕らえられる。

徳川幕府でキリスト教徒が処刑されていたが、彼は勇敢に信仰を説いた。海賊はガリバーの命を救い空飛ぶ島へ送り出す。その後多くの苦難を乗り越えて故郷に戻る。

ガリバーの旅路での数々の経験が細かく語られる。これは主として西欧人の思想的、神学的戦いの様子に例えられているように見える。

アランムーア「ウォッチメン」

これは主として米国を主要な舞台としたディープステートの世界支配とそれを取り巻く世界観を描いたもののようだ。反キリストを現代的に描いたものだという。善悪二元論、世界政府に関わる実態について作品のストーリーを聖書の記述を織り交ぜながら解説している。

尾田栄一郎「ワンピース」

物語の主題は「世界を支配するのは誰か」である。主人公は海賊のルフィ。世界政府は800年もの間、海を支配している。世界政府の旧称は「連合軍」だ。創設メンバーのイムは反キリストを彷彿とさせるとティールは語る。そしてイムが反キリストならルフィはキリストだと。

「『ワンピース』の物語が最終局面になり、尾田がキリスト教の終末論的イメージを用いているのは否定しがたいものとなってきた。」

さらに文章後半で以下のような文面がある。

「さらに物語が進んで、解放された奴隷「バーソロミュー・くま」が登場する。くまは父親から、ニカという太陽神の帰還を待つよう教えられた。現実のキリスト教世界では、ギリシャ正教会のキリスト教徒が教会やイコンに、キリストのイニシャル「IC XC」とギリシャ語で「ニカ」(「イエス・キリストが勝利する」の意)を並べて刻んだ。」

キリストと太陽神を並べるという発想をギリシャ正教の風習から現実のキリスト教世界の話としてもち出している。

解放された奴隷「バーソロミュー・くま」が太陽神の帰還を待つというくだりは日本人の私から見ると、クマノ、クマソを思い出すし、太陽神の帰還とは岩戸隠れから岩戸開きまでのプロセスをイメージするが、ティール氏に日本神話の知識はないかもしれない。

ガリバーが日本人の海賊に捕らえられるという話は、日本人作家による作品の主人公が海賊(ルフィ)であるという話の伏線のように思える。

いずれにしても彼の脳内の中で「日本」と「聖書世界」が絡み、日本という国がキーではないかという「ある種の期待感」や「可能性」を持っているのではないか。彼はこの文章でそれを暗に示そうとしているのかもしれない。

この文章は長く、他にもさまざまな解釈があるだろう。全文は文芸春秋+で読める。

https://bunshun.jp/bungeishunju/articles/h11390

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