以前、ニューヨークからマイアミに向かう途中、ヒューストンの空港で、飛行機の乗り換え待ちがあり、数時間港内で時間をつぶしたことがある。行き交う人間を観察していて、驚くべきことに気付いた。
ほぼ全員が極端な肥満なのだ。アメリカの田舎に行ったことがある人は必ず感じた経験があるだろう。どうしたら、何を食ったら、どういう食い方をしたら、あんな太り方をするんだろう、というくらいに太っている。
小中学生くらいの子供でも、空港のゲートをまっすぐ通れないほど太っている。待合席では、弛緩しきった表情の小学生くらいの女の子が、日本では見たこともない超特大の紙コップで、コーラを飲んでいる。
自分も結構太り気味だが、確実に言えることは、少なくともこの場所においては、自分は「ガリガリ」だと。「どうしたら、そんなに痩せていられるんだ」と逆に聞かれそうなくらいに。
以前、友人にこのことを話したことがある。「オレはアメリカへ行けば痩せてるほうだぞ」と。アメリカに留学経験のある友人は、私にこう言った。「毛利、あれは人間の最終段階だぞ。あれと比較するな。」と。
欧米人は肉食だから太っているとか、太りやすいとか、たまにそういう話を聞くけれど、ヨーロッパで、田舎のアメリカ人のような肥満体に出くわしたことはない。イタリア人は太っているイメージがあるし、ロシア人もそうだという話を日本国内ではよく聞くが、実際は思ったほどではない。スウェーデン人は痩せ型の人が多く、日本人より平均的にはスリムな体形が一般的であった。ヨーロッパ全域において、日本人と比して肥満体が多いという印象はなかった。
しかし、ヨーロッパ人も嫌というほど肉ばかり食っているのだ。だから、アメリカ人の、特にアメリカの田舎の人間のあの肥満は、肉の食いすぎによるものではなかろうと。あの病的な、異常な肥満というのはアメリカにしかいないのかもしれない。
このことがずっと自分の中で疑問であった。土地がおおらかで、ゆったりしているからか。確かにそれもある。アメリカというところは独特の地力があって、時間の流れが非常にゆっくりしていて、人と人との空間距離が異常に遠くに感じるのだ。
だから人間もボワーっと膨らむのかと。
昨日から読んでいる、ある書籍で、この原因のひとつ(これこそが本当の原因かもしれない)に出くわした。ようやくこの問題に納得できる回答が見つかった思いである。
少し長いが以下、抜粋、
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ブッシュ前大統領はテキサスに牧場を持っていますが、そういう広々とした自然の牧場で青草を食って飼育された牛は普通の牛だからとくに問題はありません。しかし、それとは別に大量生産される安い肉というのがあります。それはどういうふうにつくられるのかというと、ブロイラーと同じように何百頭、何千頭という牛を一頭ずつ狭いゲージの中に入れて、トウモロコシの餌をどんどん食わせている。トウモロコシは栄養価が高いから、牛はどんどん脂肪がついて成長していきます。
さらにそこへ成長を促す餌を入れる。BSEの原因になった肉骨粉です。牛の骨を砕いて飼料に混ぜてやると牛の成長が一層早くなる。しかし、BSEが発生して以来、肉骨粉は危険だというので、いまは成長ホルモンを飼料に直接入れています。そうすると普通は一年、二年かかるところ.を数か月で出荷できるぐらいまで成長する。生産の回転がものすごく速くなるのです。
ところがそこで問題が発生する。牛は本来、青草を食べる動物ですから、草を食べずにトウモロコシばかり与えられていると、消火器が悪くなります。牛は四つの胃で何度も反芻しながら草の繊維質を分解して栄養を吸収してゆく。それがトウモロコシだと消化がいいから、逆にみんな胃の病気になってしまうのです。それで今度は飼料に抗生物質をまぜて食べさせる。いま全米に製薬会社で生産されている抗生物質の七割は畜産業で使われています。牛の病気を防ぐために使われているのです。
だからアメリカの肉は脂肪の塊です。しかもそのなかに成長ホルモンが残っている。抗生物質も残っている。抗生物質を含んだ肉を常食していると、何か病気になって抗生物質を飲むことになっても薬が効かなくなります。それに成長ホルモンの入った牛肉ばかり食べていると、人間の体もぶくぶく太ってくる。アメリカの下層階級の人たちは白人も黒人もみんなぶくぶく太った人が多いけれど、それはそういう安い肉を食べているからです。東海岸あたりのエスタブリッシュメントにそういう人が少ないのは、自然の牧場で育てられた健康な牛の肉を食べているからです。
――――抜粋以上(菅沼光弘『この国の不都合な真実』より)
BSEの問題が出る以前からアメリカ人の体形はおかしかったから、恐らくそれ以前から、成長ホルモンなどの薬を飼料に混ぜていたのではないだろうか。
数年かかる成長を数か月に早めるような薬で育った肉を食えば、食った人間の成長もおかしくなって当然なのではないだろうか。
TPPなどが成立すれば、今まで考えられないような激安牛肉が出回るかもしれないが要注意である。そのうち日本人もあのような病的な体形になってゆくかもしれない。肉以外の激安食品も要注意である。
ある程度年がいってから、そういう肉でも適度に食うくらいなら大きな問題はないだろうが、成長期の子供にこういう食料を与えるのは非常に危険である。食料からの異常が体質化するからだ。
ちなみに、この話の中で、アメリカの大統領候補だったジョージマクガバンという上院議員が、この牛肉の問題、アメリカ人の不健康に関する問題を『マクガバンレポート』として報告書にしたところ、全米食肉協会みたいなところから、猛烈なバッシングを受け、以降、政治的にうだつがあがらなくなってしまったとか。
また、この報告書の中で、世界の食事の中で最も理想とされる食事は、江戸時代の日本食であると書かれているという。サプリメントは役立つものだし自分も利用しているが、本来極端に不健康なアメリカの食生活の危機意識から生まれたものである。日本人には本来必要ないものかもしれない。
ちなみに、ヨーロッパではアメリカ由来のサプリメントのようなものは、忌避される傾向がある。それは、「あのアメリカ人の使っているものは」という意識あってのことのようだ。日本で流行している食品由来の健康食品は良いが、薬品由来のアメリカ製サプリメントのようなものは使用にあたって注意が必要かもしれない。

