考えてみれば、イギリスの問題以前に、フランスやドイツでも似たような動きがあり、それが今後どのような帰結をもたらすかは、不透明な部分が多い。

結局、EUという機構が、自らの生存圏も価値観をも守ることができないことが露呈した時点で、価値を失ったのではないだろうか。

宮崎さんの記事はいつもなるほどと思わせ、学ぶべきこと、気づかされることが多い。

主権の問題。これはもちろんEU発足時からの問題だろうけれど、それがかくまで問題化したことの原因として、テロへの不安があるのではないか。

宮崎氏は、これは経済問題ではなく、移民と主権の問題だと言われている。しかし、移民も、主権も、そもそもEUという機構の発足要因は、アメリカ(ドル)や日本(円)に対抗するための経済圏を確立することであった。

経済的な要因がなければ地域統合の必要性はない。

そもそも、欧州人というのは、凄まじく国家意識の強い人々である。それを耐えてまで地域統合、ひいては政治的統合にまでもっていこうとしたことの根本原因は、「経済的な事情」であると思う。

日本でも東アジア共同体なるものの設立を意図する人々がいて、はとぽっぽのハトヤマさんが中心人物となっているが、中国や韓国と通貨統合し、移動の制限を撤廃し、最終的には、政治的統合を行って国家の主権を制限するところまでいったなら、どうなるのか。

今の日本ですら、8割は反対だろう。

もっとも、EUであれば、価値意識は大きく変わらないが、中国、韓国との統合など狂気の沙汰だろう。

私は、これをもって、「経済至上主義時代の終焉」であると思っている。経済よりも人間にとってより重きを置くべき価値観があるんだということに気付く時がきたんだと思う。

以下、宮崎正弘さんのメルマガを転載。

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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成28年(2016)7月1日(金曜日)
          通算第4950号 <前日発行>
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 EUから離脱する英国はどこへ向かうのか?
  シティからEU企業は一斉にエクソダスの構えだが
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 EU首脳会議はキャメロン英首相をむかえて「いいとこ取りはさせない」などとセクト主義的な主張をした。EU議会総会ではEU大統領が、ファラージュ英国独立党(UKip)党首に向かって、「あんたは、なぜそこにいるのか」と詰め寄る場面もあった。

 EU離脱は、直前まで予測されていなかった。

EU諸国の一部は「最悪のシナリオ」の準備をしていたが、まさかよもやの結果である。

というのも、直前にジョー・コックス下院議員が「離脱派」に銃撃され殺害されるという悲惨なテロ事件がおこり、この衝撃は離脱派の民意を雲散霧消させたと把握されていたからだ。

 だが前夜までの英国政界の舞台裏では権力をめぐる暗闘がおきていた。

 キャメロン首相は後継に右腕のオズボーン財務相をあてるつもりだった。ところがキャメロンの最大のライバルとして急浮上していたのがボリス・ジョンソン(倫敦市長、当時)だった。思わぬ伏兵、それもジョンソンは「残留派」だった立場をコロリと豹変させ、EU離脱の戦旗を振った。

 ジョンソンは「MAKE BRITAIN GREAT AGAIN」(偉大なる英国よ、再び)とまるでトランプの猿まねのようなスローガンを並べたが、EU残留を主権喪失と捉える国民には受けたのだ。

 キャメロンとジョンソンはともに名門出自のサラブレッド、政界に出遅れたジョンソンは米国で吹きあれていたトランプ熱狂の嵐に被れたかのように、過激な主張とパフォーマンスを演じることによって次期首相レースに名乗りを上げた。

これが番狂わせの始まりだった。

 そもそもボタンの掛け違いはキャメロンが「国民投票」で民意を問うとした誤断である。

国民投票をするのは、愚昧な大衆を巻き込む貝殻追放と同じで、そのときの国民感情と政局の変遷によって、大事な国策が左右されやすい。

議会制民主主義システムが機能しており、民意に基づいて撰ばれた代議員が国会で決めるのだから国民投票は必要がない。地方自治の場合の「住民投票」とは感覚が異なるともいえる。

 2014年、スコットランドの「住民投票」では「独立反対」が、かろうじて55・3%を獲得し、分離独立は見送られたが、それも土壇場までキャメロン首相が現地入りし、説得に当たったからだ。

スコットランド独立となれば、アイルランドと北アイルランドの合邦運動も再燃し、またウェールズとて独立を言い出しかねない。そうなると「連合王国」は消滅する。

 ▼むしろ地方都市や若者が残留を望んだ

 だが、国民投票はそうはいかなかった。

 離脱が51・9%、残留が48・1%と辛勝とはいえEU離脱組の勝利となった。投票率も72・2%と、総選挙の66%より高い。それほど英国民が関心を深くしていた。

また地区別得票率を見ると予想より逆で、都会が離脱派、地方が残留多数という想定外の結果だった。

ちなみにスコットランドでは残留が62%に対して離脱は僅か38%,アイルランドでも55・8% vs 44・2%。ところがイングランドでは46・6% vs 53・4%,ウェールズは47・5% vs 52・5%と逆転している。

 残留派の敗因は何か?

 第一に英国独立党(UKip)の大躍進が続いていた。つまりEUに残留して、主権を希釈化され、英国の伝統文化などアイデンティティ喪失を恐れるナショナリズムが、はやりのグローバリズムの蔓延に嫌気した国民の心理をうまく衝いたことになる。

 第二に離脱組が最大の問題としたのは「主権」の恢復にあった。EUの規則に拘束され英国の主権は台無しにされていることへの懸念が拡がった。とくに都会の若者に、この傾向が顕著にでた。

 第三は移民問題である。

もともと英国は旧植民地から移民を大量に受け入れ、とりわけインド・パキスタン、香港、ナイジェリアからの移民が三大ファミリー、ここへ近年は中国から、そしてEUの規則、シェンゲン協定により、東欧から技術者、インテリが大量に雪崩れ込み、イギリス人の職を奪った。

 2004年にポーランドが嚆矢となって東欧からの移民が急増、年間30万人が英国に移住した。

学校、公園、公共施設、公会堂、福祉、生活保護。あらゆる社会の末端には移民だらけとなり、6400万英国人口の、じつに800万人が移民となったのだ。12・5%にあたる。

 ▼経済の問題ではない、移民と主権が問題なのだ

 第四はテロリズムだが、これは論じるまでもない。

 残留派の主張、経済的に大変な事態になりかねないという反論には弱点が目立った。

 英国の製造業の労働人口は8%で、大半は米国同様にサービス産業、とくに国際金融に依存する経済構造であり、英国からEUへの輸出は45-50%だが、輸入は16%でしかなく、EU企業の60%が英国に営業拠点をおいている。

つまりEU残留で英国が享受できるメリットとは、一部のエリート、富裕層にしか貢献せず中間層の不満を解消する論理、説得力は弱くなった。

 ユーロに英国は加わっていないが、ユーロの前身であるERM(欧州通貨メカニズム)に英国が加わった結果、30億ポンドの為替差損を産んだ。

英国ポンド安に投機したジョージ・ソロスは個人でも10億ポンドを儲けた。サッチャーはこの事態を踏まえて、ユーロには加わらなかった。

独立国家としての通貨主権を断固として護ったのだ。

 グローバリズムの妖怪が全世界を覆ってきたが、ついに終わりの始まりとなり、敗退という世界史的意味は大きい。

 「哀しい出来事」と慨嘆したメディアや人々をみよ。グルーンスパンFRB元議長、マーチン・ウルフ(フィナンシャルタイムズ経済コラムニスト。著名な国際的経済評論家)、英誌エコノミスト等々。日本でも之を受けてFTやエコノミストと提携する日本経済新聞が一番の落胆を示した。グローバリスムの敗退が始まったのである。

https://ja.wikipedia.org/wiki/東アジア共同体研究所

(写真:新潮社フォーサイトより https://www.fsight.jp/articles/-/44765

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